第7回ネット小説大賞で大賞に輝いた『白豚貴族ですが前世の記憶が生えたのでひよこな弟育てます』(以下、しろひよ)が、2025年7月からTOKYO MX・読売テレビ・BSフジにてアニメ放送されることが決定しました!
やしろ先生に独占インタビューを敢行し、前半では『アニメの見どころ』を、後半では『小説を書くときのコツ』などを伺いました。
ぜひ最後まで読んでみてください♪
第7回ネット小説大賞受賞!
君に優しい世界を! 親バカな兄と幼い弟の領地経営ファンタジー!
腐敗した大国・麒凰。その片隅で暮らす、不仲な両親に見放された肥満児(五歳)――伯爵家長男・鳳蝶(あげは)に生えたのは、日本人としての前世の記憶だった。そんなある日、腹違いの弟・レグルスに出逢い、成長した彼に爵位継承権を巡り殺されると知ってしまう。未来を受け入れた鳳蝶は、実母を亡くした幼い弟を放ってもおけず育てることに。布絵本を手作りしたり、茶わん蒸しを開発したり、前世で得意だった裁縫と料理をフル活用! キラキラふわふわで純真無垢なレグルスに懐かれ……気づけばすっかり親(兄)バカに! 少しでも豊かな地を譲り渡すため、時に神々をも巻き込みながら、一歩一歩改革を進めていくのだった。「レグルスくん……お腹、もちもちしないで」「にぃに、だいしゅき!」。
幼き兄弟の領地経営ファンタジー!
―――この度は、「しろひよ」アニメ化おめでとうございます! アニメ化の話を知ったときの心境はいかがでしたか?
ありがとうございます! アニメ化の連絡をいただいたとき、正直、まずウソだと思って、すぐに日付を確認しました。「今日はエイプリルフールじゃないな…」「私が知らんうちにエイプリルフールの日が増えたのかな」と(笑)
TOブックスの編集者さんにも「アニメ化する順番が違わない?」「この作品とかあの作品のアニメ化まだですよね?」と聞いてしまうくらい現実味がなかったです。
―――アニメ化にあたって、先生はどのように関わられていますか?
脚本を読ませてもらったり、アフレコに参加させてもらったりしています。事前に、迷惑じゃなかったら脚本から原画、制作まで見せてもらいたいとお伝えしていました。こうしてほしい、とお願いするときもありますが、基本的には原作とコミカライズに忠実に進めていただいていると感じています。
あと、本来は原画展に行かないと見られない絵が、自分の作品だからという理由で、みんなより先に無料で見せてもらえるのも嬉しいですよね。「やったじゃん!ラッキー!」と思って楽しんでいます!
―――原作者の先生からそのようなお話を聞くと、我々としても嬉しいです。コミカライズを担当されている「よこわけ先生」の貢献もありますね。
そうですね、よこわけ先生は構成力がすごいです。原作は一人称で書いているので、基本的に他の視点は入らないのですが……よこわけ先生は他のキャラクターの視点を入れたうえで、場面を再現してくれる。だから、よこわけ先生が話を前後にさせたりするときには「絶対になにか意味があるんだろうな」と思って、信頼してお任せしています。
最初に絵を見たときは、「めっちゃ可愛いんですけど、いいんですか!? 私、あの、なにかお支払いした方がいいですか!?」という感じでした(笑) TOブックスには、すごい方を呼んできてくれたな、と感謝しています。
―――コミカライズの絵とっても可愛いですよね! では、アニメの声優について、特に先生がピッタリだと思った声優さんはいらっしゃいますか?
役にピッタリっていうよりも、そもそもヴィクトル役の遊佐浩二さんと、ラーラ役の七海ひろきさんのお二方がいなかったらキャラクター自体が誕生していなかったかもしれません。
遊佐さんの声の優しさと、ヴィクトルのわかりにくい優しさがすごくピッタリだったんです。芸術家でちょっと変なところもあるけど、実は優しさを持っている人。もう、“ヴィクトル=遊佐さん”でないと成立しないとすら思っています。
また、七海さんに関しては、ラーラを作るときに、最後まで“お姉さんと呼ばれたいお兄さん”なのか、“お兄さんと呼ばれたいお姉さんなのか”、どっちにしようと悩んでいたのですが、そんなとき七海さんの愛称が『ひろきのお兄様』であることを思い出しました。七海さんもお兄様って呼ばれていることだし、そういう女の人がいてもいいだろうと思って、ラーラが誕生したんです。今回アニメ化する際、ラーラという成り立ちも含めて、ダメ元で七海さんにお願いしました。
―――そういう背景があったのですね!
家族や友人に声の感想を聞くと、みんな口をそろえて「ラーラの声がピッタリ!」と言ってくれるのですが、私としては「そりゃそうでしょうよ、七海さんがモデルなんだから!」といった感じです(笑)
あと、現場ですごいなと思ったのが、イゴール役の村瀬歩さんです。演技を見て、なんかもうビックリするぐらいイゴールだと驚きました。
もちろん、鳳蝶役の久野美咲さんやレグルス役の伊瀬茉莉也さんらも言わずもがな。皆さん、よくもこれだけすごい人たちを探してきてくださったなという感じで、キャスティングの妙ですね。
―――先生が思う、アニメの見どころや、「ここだけは見てほしい!」というところはどんなところですか?
もう、全部観てください!(笑)
声優さんもそうですけど、作画のディテールの細かさとかすごいですよ。家の調度品も、鳳蝶の持っているお裁縫道具とかすっごく可愛い。「こんなん持ってるんや。そらお裁縫楽しいわ」と、こっちが欲しくなるくらいの可愛さでしたね。
やしろ先生、アニメ化への状況やお気持ちを教えてくださり、ありがとうございました!
このあとの後編では、やしろ先生に、「小説の書き方」をテーマにインタビューしてみましたのでぜひご覧ください!
―――「しろひよ」は、やしろ先生にとって、初めての長編、かつ異世界モノです。どのようなお気持ちで筆を取られたのですか?
長編はこれが多分最初に書いた作品で、それまでは二次創作などを書いていました。書くよりも読むことのほうが多かったのですが、その当時、友人の物書きに「こんなん読みたい!」とリクエストしたら、「自分で書きな!」と言われてしまって、仕方ないから自分で書くか…と…(笑)。
実際に書いて誰も読んでくれなかったら寂しいので、「書くから読んでね」とお願いしてから書きましたね。その後、友人が読んでくれたうえにレビューまで書いてくれていました。
―――それが今やアニメ化も決まってご友人も驚いたでしょうね! 「しろひよ」の作中では、音楽や演劇など、先生の「宝塚ファン」である面が活かされています。宝塚にハマられたきっかけはあるんですか?
元々母親が塚オタ(宝塚ファン)で、私も小学校の低学年ぐらいから母親に連れられて劇場に行っていました。なので、いざ自分が物語を作るとなったら、宝塚の方を参考にしたり、お芝居から着想を得たりしていることが多いかもしれません。
―――先生的に「宝塚のココが好き!」というポイントはどこですか。
宝塚って、例え悲劇の物語でもレビュー(ショー)がすごく明るいんです。観客には最後楽しい気持ちで帰ってもらいたいという思いで、レビューを必ず入れていると聞いたことがあります。
人生ってそれだけ底に居ても、ふって笑う瞬間があるじゃないですか。なんか面白いわけでもないけど、なんかふっと気が抜けて笑うとか、笑えなくなるってことはそんなにないのかなって。そうやって笑えている限りは生きていけるんだろうなというのが、自分のなかにもあって。自分の作品のなかでも、重いシーンでもちょっと笑えるような部分は入れているかなと思います。
―――言われてみればたしかに! 鳳蝶にはダークな設定がありながら、いつも明るいですよね。先生から見て、鳳蝶のどのようなところが愛される要素だと感じますか?
鳳蝶が好かれている点は、やっぱり真面目さとか誠実さ、素直なところですかね。あと、踏みつけにされてもそのままでは終わらない、雑草のような強さを持っているところ。大概の人は、頑張っている人間のことを嫌いにはならないですよね。
―――キャラクター作りで意識されている点があれば教えてください。
まず、どのキャラクターに対しても考えているのは、“自分が死んで自分という種が絶滅するとなったとき、それを受け入れるか否か”です。「絶滅するなんてヤバイやん!」と焦るキャラは結構強く書けるし、「…いや、別に絶滅してもいいかな」と受け入れるキャラだと鳳蝶みたいになる。その答えをキャラの中核にして、派生して考えていきます。
鳳蝶が暗く見えないのは、「自分が死んだところで世界は変わらないし、いいんじゃないの」と、大げさに悲観しない性格だから。自分に無関心というか、そういうものが突き抜けちゃうと暗く見えず、むしろ明るく見えるんですよ。
―――キャラクターの解像度が上がって興味深いです。先生は現在も「小説家になろう」で連載されていますが、読者のコメントがたくさん寄せられていて、先生もそれにお返事をしていらっしゃいます。こうした読者様の声は、活動のモチベーションになっていますか?
もちろんです。読まれないより読まれた方が楽しいですし、読者がなにか書いてくれるのだったら、それに答えようと思っています。
あと、私が持っていない視点を持っていたり、的を射ていたりするときもあるので、なるほどそういう風にも思えるんだな、と私自身参考になっています。
―――「しろひよ」のミュージカルを観劇した際、幅広い年齢層に愛されている作品だと感じました。どのようなファン層が多いと感じますか?
私が知っている「しろひよ」ファンの方は、下は小学生の低学年から、上は80歳代までいます。可愛いものが好きなことに、男女や年齢の区別はないですよね!
後者の方は、書籍を読んでくれたらしく、「次の巻いつ出るの?」と楽しみにしてくれているようで、嬉しいです。
―――それは嬉しいですね! 小学生の低学年というと、アニメ化の前に「TOジュニア文庫」として児童用の図書として出版されていますよね。
その当時、私の知り合いのご家族の小さい子が「しろひよ」を読む際、わからない単語を辞書で調べたり、大人に聞きたりしながら読んでいると聞いていました。私としては、読み仮名をもっと増やそうか、いっそのこと難しい漢字を使うのを避けようか、などと悩んでいたのですが、そんなとき編集者から「児童文学を出しませんか」とお話が来て。
ジュニア文庫だと、すべての漢字にルビがついて、挿し絵の数も多くなる。たしかに辞書を引いて読むことは大事ですが、読むのに時間を削られてしまうのも事実。これは渡りに船だと思って、ぜひお任せしようと思いました。
ネット小説大賞(ネトコン)は今年で第13回目を迎えます。やしろ先生は2019年に開催された第7回で2次審査で一度は落選するも、復活受賞するというサプライズが起こりました。
―――当時、ネトコンに応募しようと思ったきっかけはどのようなものでしたか?
友人がコンテストに出してみると言ったので、「え、じゃあ私もちょっとやってみよっかな」といった軽い気持ちで応募しました。2次審査で落ちたので、「終わった終わった」と思っていたら、追加で受賞して。「2次審査通ってないのにいいんですか!?」と驚きました。
―――受賞後、コミカライズ、舞台化、アニメ化と各メディアミックスが決まっていきましたが、先生自身は元々こうした展開を意識して書かれたのでしょうか。
いや、もうまったく! コンテストに応募しておいて……ですが、そもそも書籍化するとも思っていなかったので、そんな気はまったくありませんでした。脳内の映像をどうやって伝えようと思って必死になって書いている、という感じですね。アニメ化はまた一大メディアミックスといった感じで嬉しいです。
―――ネトコンの選考中、「小説家になろう」サイト内で人気が高まっていくことを実感しましたか? どのような状況だったのでしょうか。
実は当時、ランキングの見方やブックマークの仕組みをよく知らなかったんです。人気が出てきたと感じたのは、先述した友人がレビューを書いてくれたあと。ポイントが集まっていることに気が付いた頃には、ランキングは2位か3位かだったように思います。最大風速が過ぎ去った感もあり、「これはもしかして1位だったときがあったのか…?」なんて思ってました(笑)
それに私、ジャンルの分類もよくわかっていなくて、ローファンタジー・ハイファンタジーの区別もついていませんでした。スローライフ系がローファンタジーで、敵と戦うような激しい作品がハイファンタジーだと勝手に思い込んでいたり……。
―――狙って獲得したランキング入りとも違ったのですね…! では、「小説家になろう」で創作している方に向けて、作品作りについてアドバイスはありますか?
アドバイスになるかどうかはわからないんですけど、インプットは絶対にした方がいいです!
一見まったく関係なさそうな話でも、集めておいたらなにかの役に立つときがあります。そもそも私は宝塚やお芝居が好きなので、その題材になった歴史や人物を調べていくうちに、色んな事柄を知ることできました。
例えば、イギリスの伝説的王様・アーサー王の話でいうと、「聖杯ってなんだろう?」「アーサー王の円卓の騎士って?」と、数珠つなぎで知っていく。そういった単語から色々引っ張ってくるって、オタクは得意じゃないですか(笑) 基本的に広く浅く調べて、気になったら深く調べていくことで知見が広がって、作品に活きてくるのかなと思います。
―――今後、「小説家になろう」からネトコンに応募し、商業デビューを目指す方に向けてメッセージをお願いします。
ネット小説大賞であれば、一次審査とか二次審査で落ちたからと言って、それが全部ダメって思い込まないでほしいです。コンテストってマッチングのような側面もあるので、落選してしまったとしても、今回はそのマッチングがうまいこといかなかっただけの話。部分的に変えればうまくいったり、次回また応募したら通過するかもしれません。
私自身が二次選考で落ちて復活受賞をした身ですし、今ではよくそれをネタにしています(笑)
やしろ先生、この度はロングインタビューと、親身なアドバイスをありがとうございました!
読者のみなさんも7月から放送スタートする「しろひよ」を一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです!
君に優しい世界を! 親バカな兄と幼い弟の領地経営ファンタジー!
2025年4月より毎週日曜20:00~ABEMAで独占・無料配信中♪
7月よりTOKYO MX・読売テレビ・BSフジにてTVアニメ放送開始!