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【冨長御堂先生】受賞インタビュー『# 拡散希望 その炎上、濡れ衣です』|受賞作の見どころと『小説の書き方』について

uki /# 拡散希望 その炎上、濡れ衣です @宝島社

 

第10回ネット小説大賞において『# 拡散希望 その炎上、濡れ衣です』で
受賞となった冨長御堂先生に独占インタビューを敢行!

前半では『受賞作の見どころ』、後半では『小説を書くときのコツ』などを伺いました!
ぜひ最後まで読んでみてください♪ 

 

受賞作品のご紹介

第9回『ネット小説大賞』の受賞作。濡れ衣のネット炎上&逆転を描いたサスペンス! ウェディングプランナーとして充実した日々を送っていた藍原ひかる。ある日、トラブルだらけの披露宴に出くわし、騒ぎの収拾に手を貸した。――その後日。「#A原、死んで詫びろ」「#A原を許さない」ハンドメイド作家としてSNSで知名度のあった新婦の投稿から、瞬く間に式当日のずさんな対応が拡散され、なぜかその責任者として藍原の名前が挙がっていたのだ。悲劇のヒロインとして注目を浴びたい新婦、広がる炎上に愉悦感を覚えて火種を投下し続ける新婦友人、ゲーム感覚で藍原の個人情報を特定していくネット民。絶体絶命の窮地で、藍原が出会った弁護士・九印葉桜は彼女に“前代未聞の訴訟”を提案し……。怒濤の逆転劇が幕を開ける!

Amazon『# 拡散希望 その炎上、濡れ衣です

著者のご紹介

 

 

――――この度は受賞、おめでとうございます! 今回、ネット小説大賞にご応募いただいたきっかけを教えてください。

冨長御堂先生

Twitterでフォロワーが気になるツイートをしていたので、連絡をしてみたのがきっかけでした。

そこで、ネットで炎上をしているという話が出てきて。出版社で働いていることもあって、ルポ記事の執筆など何かできることがないかなと思って話を聞いていたんです。

 

――――見本誌のプロフィール欄で拝見したんですけど、編集者さんなんですよね! 

冨長御堂先生

そうなんですよ。ただ、当時は仕事をしているなかで「何か変化がほしいな」と思っていた頃で。

そこで『炎上』をテーマにした小説を、自分で書いてみようと思ったんです。

 

――――そこからなぜ、『小説家になろう』に投稿されたんですか?

冨長御堂先生

書いてみたものの、それをどうしたらいいのか分からなくて(笑)。クリエイターの友達に相談したところ、『小説家になろう』を教えてくれたんです。

ネット小説大賞に応募したのは、仕事で『このミステリーがすごい!』大賞の受賞作家さんにインタビューをしたことがあって、いつか自分も宝島社さんから本を出してみたいという憧れがあったからです!

 

――――それで宝島社さんとご縁があって出版されるの、凄いです……! いよいよ3月7日に発売となりますが、WEB版から小説の内容はどのように変わりましたか?

冨長御堂先生

改稿にあたっては、担当の編集さんからアドバイスをいただいたこともあって、キャラクターをかなり修正しました。

エンタメ小説としてキャラ立ちが必要だし、登場人物が多いので差別化をしないと、とアドバイスを頂いて。

 

――――登場人物が多かったのに、全員がすんなり頭に入ってきましたね。葉桜先生のキャラクター性も大好きでした!

冨長御堂先生

文字だけで情報を伝えないといけないので、髪型とか制服の着方などでキャラクターを差別化していって。

それから「この名前の方がイケメンっぽいですよね」「実写化するならこの人ですよね」って担当さんと話しながら、どういう方向に修正するか決めていきました。

だからキャラクターが良かったなら、担当の編集さんのアドバイスの力が大きいですね(笑)!

 

――――二人三脚で進んでこられたんですね……! 考えてみれば第9回ネット小説大賞から1年と少し経ちますが、丁寧に修正されてここまできたんですね。

冨長御堂先生

担当編集さんの言うことは、本当にちゃんと聞いたほうが良いと思います(笑)! と言っても細かいところは任せていただけましたし、自分から「こうしたい」って言ったことも殆どなかったですね。

やっぱり読者の視点を理解して伝えてくれたり、市場を理解しているのは、担当編集さんなので。

 

――――キャラクター性で言うと、炎上のもととなった無責任な社員の美濃さん! すべての元凶なのに、のらりくらりしていて憎めないキャラクターですよね。

冨長御堂先生

実際、身の回りに、明確な悪人っていうのはあまりいなくて。誰もが少しズボラだったり身勝手だったりするんじゃないかな、と(笑)。明確な悪役を作らないってことは、意識していましたね。

『悪い』と『嫌い』って一緒くたにされがちですけど、実はその違いって、しっかり区別しないといけない、と思うんです。

『悪い』までいかない、『嫌い』という印象になるキャラクターを狙って書くようにしていました。

 

――――炎上にまつわる出来事でいうと、「同じ目に遭ってほしくないから」炎上させる、周囲も「可哀想だから」「友達だから」それを広げていく……という、善意の負のループが起きていましたね。

冨長御堂先生

明確な悪意とか悪人じゃなくて、善意や好意による気持ちの齟齬が折り重なっているんですよね。

それで普通の子がネットで燃えている。そういうことが、今の時代に起こってしまうんだなあ、と……。

 

――――本文でもあとがきでも、メッセージ性の強い文章があり引き込まれました。

冨長御堂先生

人って結局、自分の価値観や正義感の範囲から出られないと思うんです。だからメッセージ性が強くなったのは、この『炎上』というテーマに対して、自分の価値観や面倒な正義感みたいなのが出ちゃったのかもしれません……(笑)。

ネット、SNSを使う以上、いろんなリスクがあります。理不尽な「事故」みたいなことだって起こりますよね。そうしたニュースなどに普段から意識が向いていたというか、疑問があったというか……。だから自分にとっては、書きやすいテーマだったように思います。

 

 

――――ここ数年で注目されてきた、本当に社会的なテーマですよね。それでは最後に先生から、『#拡散希望 その炎上、濡れ衣です』についてコメントをお願いします!

冨長御堂先生

先ほどお伝えした通り、改稿にあたってキャラクターを大きく変えていますし、いろんなところに伏線と遊びがあります。

メインの舞台は上野、主人公の出身地は北関東としていますが、文章からどのエリアか推測できるようにしていたり。葉桜先生と主人公との意外な接点なんかも、ちょっとした遊びとして忍ばせてあります。

そういうところに気づいて頂けると、より楽しんで頂けると思います!

 

 

 


 

 

――――文章を書くときのコツってなんでしょうか……?

冨長御堂先生

後輩編集者やライターたちには、「同じ小説を何度も繰り返し読むのがいい」と言っています。

10冊を1回ずつ読むんじゃなくて、1冊を10回読む。何周も読むとその著者さんの流儀がわかるようになるんですよね。

ただ読むんじゃなくて、覚えるくらいに読むこと、これが上達する方法の一つだと思っています。

 

――――たしかに何回も読んでいると、言い回しやテンポ感を掴めるようになりそうです! ところで、冨長先生は執筆に詰まったことありますか?

冨長御堂先生

どう展開させようかな、と思うことはありましたが、詰まるということはなかったと思います。執筆に詰まるのって、解像度の低さが原因なのかもしれません。

例えば、先に決めてしまった展開にこだわりすぎて、無理に進めようとする場合。キャラクターの役割・能力、その世界の約束事を無視してでも進められないか、と考えてしまい、流れに負荷がかかってしまう。そうなるとやはり詰まってしまいますよね。

だから伝えたいことの解像度をあげて書くことを意識しました。強引に「伝わってくれ!」と思っても読み手には通用しない(笑)。だから誤魔化そうとせず、すっきりと頭の中で構築しておくことを意識しました。

 

――――執筆前に、プロットは作成されていますか?

冨長御堂先生

今回はいろいろ聞いたり調べたりしたことを元に書いたので、作っていません。だから書き始めたときはラストも決まっていなくて。ふと、ラストシーンを思いついたのは、職場でした。そのときはもうニヤつきが止まらなくて、トイレに行っちゃいました(笑)。

 

――――アイデアがおりてきたんですね(笑)! でも本当に読後感のよいラストでした……!

それでは最後に、作家志望の方々や、次回のネット小説大賞応募者にアドバイスがあればいただけますと嬉しいです!

冨長御堂先生

転機って転機じゃないふりをしてやってくると言うか、意外と過ぎ去ってから分かるんですよね。

今回、作品を書いたのはTwitterから友人に声を掛けて、話を聞いてみたことがきっかけでした。ネット小説大賞に応募したのもたまたま受賞できたのも、とにかく自分から求めて変化を起こそうとしたことがきっかけかな、と。

どれほど自分が小さい存在でも、まずは動けば小さくても波は生まれるんだなあ、というのが今の実感です。

それから、やっぱり「この作品で受賞するんだ!」という整え方や、準備をすることだと思います! 

 

――――たしかにどの受賞者さんに話を聞いてみても、「この作品で受賞したい」という1作品ずつに対する気概をとても強く感じます……! 

参考になるアドバイス、本当にありがとうございました!

 

3月7日に発売の『# 拡散希望 その炎上、濡れ衣です』。ぜひチェックしてくださいね!

 

 

   

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