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金賞受賞作!【雪車町地蔵先生】受賞インタビュー|受賞作の見どころと『小説の書き方』について

tokiwa. /『回復術士だと思っていたら、世界で最初の衛生兵でした!
~勇者パーティーを追放されたヒーラーは、戦場の天使と讃えられました~』(宝島社)

 

第10回ネット小説大賞において『回復術士だと思っていたら、世界で最初の衛生兵でした! ~勇者パーティーを追放されたヒーラーは、戦場の天使と讃えられました~  』で
受賞となった雪車町地蔵先生に独占インタビューを敢行!

前半では『受賞作の見どころ』、後半では『小説を書くときのコツ』などを伺いました!
ぜひ最後まで読んでみてください♪ 

 

受賞作品のご紹介

 第10回ネット小説大賞の金賞受賞作!

コミカライズも同時進行中! ヒーラーとして独自の治療を続けていたエイダは、勇者のパーティーで力を尽くすも、戦力外通告を受けて追放されてしまう。しかし、いかなる死地からも生還できる彼らの躍進はエイダの治療技術によるもので……。

彼らが落ちぶれていく一方で、追放されたエイダは誰かを助けたいという思いから従軍を決意し、地獄の最前線へと配属されることに。そこで彼女は自分の独自の治療技術を施すことができればもっとたくさんの命が救えるのではないかと行動を始めて――。

のちに“戦場の天使”と呼ばれる少女の奮闘劇、ここに開幕です。

Amazon『回復術士だと思っていたら、世界で最初の衛生兵でした!

 

 

著者のご紹介

 

――――第10回ネット小説大賞での受賞、おめでとうございます! ネット小説大賞は以前からご存じだったのでしょうか?

雪車町地蔵先生

第9回ネット小説大賞で初めて応募して、最終選考まで残ったこともあり第10回でも応募しました。有難いことに今回は別作品で受賞させていただき、本当にびっくりしています。

 

――――回復魔法がある異世界で、応急手当という現実的な方法によって戦場の戦士を救い続ける主人公。異色の物語だと思いますが、着想のきっかけは何だったのでしょうか?

雪車町地蔵先生

赤十字病院をつくり、応急手当を普及させたクララ・バートンという偉人がいまして。彼女が異世界にいたらどうなるんだろうと思ったのが着想のきっかけですね。

科学的な発達があまりない、魔法をベースとして異世界では、回復魔法で何とかなってしまう。

そこにクララ・バートン女史のように活躍するキャラクターを投げこんだら、一体どういう化学変化が起こるかなと。

 

――――WEB版の物語の完成度がとても高くて驚きました! 毎日どれくらいのペースで書かれていましたか?

雪車町地蔵先生

1日3000字くらいにセーブしていて、3000字を書いた後はひたすらその内容を練っていきます。

やっぱり健康が大切だと思うので、余裕をもって3000字くらいにセーブしておくようになりました。

 

――――余裕をもって3000字…!? かなり執筆スピードが速いですよね、事前にプロットをしっかり作っているのでしょうか?

雪車町地蔵先生

プロットは作り込みますね、いわゆる「プロッター」です(笑)。

10万字につき5000字くらいのプロットを作っています。話の流れをズラっと書いていくのですが、起承転結のなかにさらに細かく起承転結をつくっていくイメージですね。

読者の反応を想像しながら、引きの場面を作ることを意識しています。

 

――――ここまでWEB版のクオリティが高いと修正も少なそうですが、WEB版と小説版の違いを教えていただけますか?

雪車町地蔵先生

そうですね、ありがたいことに大きな修正はなく進めることができました。書き下ろしを追加しているほか、WEB版と『小説家になろう』では読みやすくするために省略していた部分や矛盾点を一部加筆・修正しています。

書き下ろしはハッピーなお話になります。本編のなかで「全部終わったら、アップルパイを食べましょう」というセリフが出てくるのですが、そのシーンを見たいという感想をいただいたこともあったので、よい機会だと思い書かせていただきました!

 

――――主人公にとってアップルパイは特別で、「しあわせの味」なんですよね! キャラクターもかなり綿密に設計されている思うのですが、どのようにして作られたのでしょうか?

雪車町地蔵先生

最初はプロットのなかでキャラクターの名前やパーソナリティが生まれてきます。この時点ではプロットのなかの名前が付いた駒でしかないので、暫くそのキャラクターと向き合っていきます。

どんなご飯を食べるだろう、こういうときどんな反応をするだろうか……といったことを考えながら短編を書いてみると、だんだんキャラクターに血が通うようになってきますね。

 

――――プロットを5000字も書いて、短編も書いて、それから1話を書き始めているんですね! 1話目から世界観が完成されているのも納得です……! 

ところで、主人公のエイダは自ら戦争の最前線という厳しいところに赴いて、戦士たちのために献身的に活動しますよね。

その姿勢が本当に格好良いのですが、先生からみて彼女はどんなキャラクターでしょうか?

雪車町地蔵先生

彼女は貴族なので、『ノブレス・オブリージュ(※高い身分がある者は、身分に応じた社会的責任を果たす義務があるという考え方)』が叩き込まれているんですね。幼年期に挺身そのものも目撃したことがある。それだけに、責任感や献身の心を強く持っているキャラクターです!

 

――――最後にファンの皆さんや、本作が気になっている方に向けてのメッセージがあればお願いします。

雪車町地蔵先生

この物語は『追放もの』であると同時に、いわゆる貴種流離譚(試練を克服していくことで尊い存在となる物語)で、なおかつ衛生兵の物語でもあります。

苦しい場面も出てきますが、最後にはみんなが前向きになれるお話です。ぜひ安心して読んでいただけたらと思います!

 


 

 

――――プロットを作り込んでいるとのことですが、執筆に詰まったことはありますか?

雪車町地蔵先生

プロットを書き終わるまでが七転八倒していますね。

プロットでは、コンセプトやキャラクターが動くモチベーション、読者がそのモチベーションを受けてどういう感情を抱くのか……などを考えていきます。

 

――――「読者のどういう感情を抱くのか」という部分について、具体的にはどのようにして意識されていますか?

雪車町地蔵先生

エイダがなぜこの行動をするのか、それを納得してもらえるように書いていますね。

本作では三人称を使っていますが、読者が読んでいくうえで感情移入をして「この人物が次になにをするのか、続きを読みたい」と思ってもらえる物語にしたいと思っています。

 

――――三人称というお話が出ましたが、普段は三人称で物語を書かれることが多いのでしょうか?

雪車町地蔵先生

一人称も三人称も使います! 一人称はミステリーなど、叙述トリックを使ったり勢いが欲しいときに活用していますね。

三人称は情報を整理整頓して出したいときに活用していて、本作は専門用語も出てくるので三人称を採用しました。

どちらで書くか悩む場合、冒頭を両方書いてみて、しっくりくるほうを書くのが良いと思います。

 

――――先生の文章、とても綺麗で読みやすいですよね! もとから文章を書くのは上手かったんですか?

雪車町地蔵先生

そんなことないです……! 学生時代は文章が下手すぎて、40万字も書いたのにお蔵入りした作品もありました。

でも、作家活動をしている仲間とお互いに読んだり読んでもらったりしているなかで、次第に上達していきました。ただ、これには「ここがおかしいね」と気兼ねなく話せる信頼関係が大切だと思います。

 

――――戦争や医療に触れる本作ですが、資料集めは大変でしたか? 

雪車町地蔵先生

そうですね、戦記物も読みましたし、戦史の一部を学んだり、医療技術については書籍の値段も高いので、図書館へ探しに行ったりもしました。

今は便利なことにWikipedia等に参考文献が掲載されているので、そこから辿って論文などのアウトラインへと目星をつけ、本当に必要な資料だけを購入していくことができました。

資料のことで言うと、メモはしているのだけど文献の出典を書き忘れてしまい、調べ直すのが大変だったこともありました(笑)。出典はきちんとメモっておいた方が、あとで楽だと思います!

 

――――非常にポイントが高い作品ですが、バズったきっかけは何でしょうか?

雪車町地蔵先生

本編の区切りがいいところで「☆(※評価ボタン)を押してください」「参考にしたいので感想をください」と書いてみたことがきっかけですね。

私自身、『小説家になろう』で作品を読んでいるとつい没頭してしまうので、評価や感想を送るのを忘れてしまうんです。だからこそ、作品のなかでお願いしてみるのは意外と効果的なのかもしれません。

 

――――そのほか、作家志望の方々や、次回のネット小説大賞応募者にアドバイスがあればいただけますと嬉しいです。

雪車町地蔵先生

とりあえず一にも二にも健康だと思います。皆さん命を削って書いていると思うんですけど、食生活や運動が後回しになっているといい作品が書けなくなってしまうので、燃え尽きないように気をつけていただければと思います。

あとは、インプットを沢山することも大切なのかなと。小説だけでなく、漫画やゲーム、落語、歴史など、いろんなジャンルをインプットすることで、小説のなかに経験が息づいて血の通った物語になっていくはずです。

 

――――インプットするとき、意識されていることはありますか?

雪車町地蔵先生

ただ見るのではなく、何が楽しかったのかを理解したほうがいいと思います。

わからないものを調べることが大事だとよく言いますが、なにがわからないのかを理解し、疑問を持ち、しっかり咀嚼するように心がけています。

 

雪車町地蔵先生、この度はロングインタビューをありがとうございました! 

1月27日に発売される『回復術士だと思っていたら、世界で最初の衛生兵でした!』。ぜひチェックしてくださいね!

 

 

    

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