大島てるさんインタビュー
本コンテストのテーマは「事故物件」。 そこで、サイト運営代表の大島てるさんにインタビューを敢行!
事故物件の「怖さの本質」とは? リアルな恐怖を描くためのヒントは?
ホラー未経験の方も、この記事を読めばきっと書きたくなるはず。 日常の裏側に潜む物語、書いてみませんか?
事故物件をテーマにした創作のヒント
――事故物件をテーマにするにあたって、どういった登場人物を描くのかがポイントになりますよね。
大島さん
事故物件がテーマのホラーだと主人公になるのはその物件の住民が多いと思います。やっぱりそこに寝泊りする人が、一番関わりが深いですからね。ただ、事故物件には住民以外にも、オーナー、清掃業者、不動産業者、遺族などたくさんの人が関わっています。それ以外にも、清掃に来たけれどもそこが事故物件だということを知らされていないアルバイトの学生とか、事故物件だと知らずにピザを届けにきた宅配業者とか。そういった人たちにも想像を広げてみるのも面白いかもしれません。
――物語の舞台となる、場所という視点ではどうでしょうか。
大島さん
更地や駐車場や雑居ビルも、事故・事件の現場によくなります。学校もそうですね。また事故物件が取り壊されて新たにマンションが建って、その住民は何も知らないということもあると思います。
――場所柄と事故の種類には、どんな関係性がありますか?
大島さん
例えば、飛び降り自殺は都会に多く、田舎にはあまりありません。これは単純に、田舎には高い建物が少ないからです。同じように、都会に事故物件が多いのは、単純に人が多いからです。歌舞伎町などの繁華街では、ホテルや飲み屋など、建物の中で起きる事件も多いです。
こういったものは、合理的な説明がつきますよね。それはそれでいいのですが、ときどき説明がつきにくい、不思議なケースもあります。閑静な住宅街では、めったに事件や事故は起きません。とはいえ、長く見れば、一人くらいはどこかで不幸に亡くなられてしまうことはある。そのうえで、しばらく時間がたって、また誰かが亡くなった。さて今度はどこだろう、と思ったら、「まさかの同じ場所だった」となると、やはりすごくおかしいなと感じます。
――印象に残っている「説明しづらい」ケースはありますか?
大島さん
東京のある閑静な住宅地で、かつて奥さんを自宅で殺害した男がいたんです。それから12年経って、その男がまた同じ自宅で火事で死んだ。一軒の家で二度人が亡くなる、というだけなら、「そういうこともある」と言えなくはないですが、奥さんを殺した犯人が殺人現場と同じ場所でまた亡くなるという状況は、一体何が起きたのだろうかと考えてしまいます。
また、これも東京の話ですが、3棟の集合住宅があって、それぞれの建物で別々の事件・事故が起きたのですが、3件とも起きた場所が「404号室」だった……ということがありました。Aというマンションの404号室で殺人事件、Bという団地の404号室で火事、Cという団地の404号室で自殺。建物は全部別なのに、共通点は「404号室」という部屋番号だけ。私は数字にこだわるほうなので、こういう数字の一致には妙なものを感じてしまいますね。
――こうして説明できない偶然が重なって、必然に見えるときって怖いですね。ホラーの創作の話で言うと、「怖さ」を作り出すことに難しさを感じてしまいそうですが、こうした違和感を作り出すことなのかもしれませんね。
大島さん
そうですよね。このような強い違和感が生まれたときに、その理由を、心霊的な方向に結びつけることも、創作では十分可能だと思います。
――事故物件というテーマからいろいろな物語が広がりますね。
大島さん
そうですね。私は残念ながら小説方面に明るいわけではないんですけれども、異世界に転生しましたといったジャンルに比べたら、事故物件はまだまだ作品数も少ないですし、開拓の余地が大いにある分野ではないかなと思います。まあ、異世界に転生したら事故物件になっていました、みたいな話も書けるかもしれませんが(笑)
――今回のコンテストは、事故物件がテーマであれば何でもありなので歓迎です(笑) ちなみに、どんな応募作を読んでみたいですか?
大島さん
事故物件に関連があるんであれば、なんでも読んでみたいですね。生まれ変わって事故物件になっていましたという話でもいいと思います(笑)
事故物件はなぜ怖いのか
――事故物件が人に避けられる理由って、どこにあるのでしょうか?
大島さん
「怖い」という感情とは少し違うのですが、「事故物件だと知らされていない」まま住んでしまった場合ですね。本来であれば、事故物件だと分かれば賃料や売買価格は下がっているはずなのに、何も知らされないまま相場通りの価格で契約していたとしたら、後から事故物件だと知ったときに、「騙された」という嫌な気持ちになりますよね。
次に、事前に知らされていて、本人は呪いとか幽霊とか霊的なものをまったく信じていないから「気にしない」と言って住んでしまう場合を考えてみます。そういった人でも、においがつらくて嫌になることはあると思います。
孤独死のように、しばらく発見されない状況だと、においがきつくなって初めて発見されることが多いわけです。ある意味、においは亡くなった方の最後のメッセージのようなものだと、私は感じています。もちろん物件の持ち主は、においが残らないように掃除をします。でも、それでも落ちないにおいもありますし、においを消すための薬品臭が残ってしまうこともあります。短時間だけ入るなら問題にならなくても、そこに住むとなると、やはりかなり気になるのではないでしょうか。
――霊や呪いを信じて、心霊的な意味で怖がる方も多いのでしょうか?
大島さん
私はそんなに心霊的なことにどっぷり浸かるタイプではないんですけれども、いろんな方と話していると、「霊的なものを気にしている人は、こんなに多いのか」と改めて思わされます。仕事柄あまり「そういうものを信じています」と大っぴらには言いづらそうな立場の人とプライベートで話すと、普通にそういった話が出てきます。
ただ、たとえ霊的なものを信じていなくても、においのような物理的なつらさがなくても、「気持ちの問題でなんだか嫌だ」と感じる人は多いと思います。「安心」と「安全」は違うということが、コロナ禍のときにも話題になりましたよね。合理的に考えて「安全」だと説明できれば、感情の問題は無視してよいかというと、今の社会はそうなっていない。安心だと思えること、気持ちの面がきちんとケアされることは、むしろ重視されているように思います。
――気持ちの問題といえば、サイト「大島てる」を見ていて、よく知っている場所や近所の物件に事故物件の炎マークがついていると、つい気になってしまいます。怖いというか、自分の日常と「死」がつながった感じがして、その場所や亡くなった方について考えてしまうというか……。
大島さん
人は、意外と自分の街で何が起きているのかを知りません。マンションの隣の家庭の実情も、普通は知らないですよね。だからこそ、何か事件があって報道で知ったり、「大島てる」で近所の事故物件を見つけたりすると、「もしかしたらすれ違ったことがある人かもしれない」「自分は何も知らなかったんだな」ということに、そこで初めて気づく。よく知っているはずの日常の風景のすぐ裏側に、知らなかった出来事があったと知ることで、複雑な気持ちになるのだと思います。
時間がかかるのは当たり前、まずは手を動かすこと
――サイト「大島てる」は開設から4年間、ほとんどアクセスがなかったと各種メディアでお話しされていました。その期間、大島さんは、どのようにモチベーションを維持されたのでしょうか?
大島さん
本業としてやっていたわけではないので、サイトの反響が4年間なかったとしても、生活がすぐに成り立たなくなるわけではありませんでした。だから、「もうちょっと遅くて反響が出なくても、結局もっと続けていただろうな」と思います。
今年20周年を迎えましたが、今になって思うのは、4年というのはすごく短いということです。人とは違うことをしている人の話を聞くと、もっと長い時間をかけて、やっと日の目を見たという人も多い。芸人さんでも「4年売れなかった」なんて、全然短いほうですよね。
逆に、やる前から記者会見をして「今からやります」と派手にぶち上げて、結果的に何にもならないプレスリリースを出しているケースもよく見ます。それよりは、まず手を動かして、反響がなくてもやってみる。時間がかかるのは当たり前だと受け止めるほうがよいと、自戒も込めて思っています。
――小説を投稿サイトに掲載し続けていてもなかなか多くの人に届かなかったり、身近な人に面白いと思ってもらえないと落ち込む方もいらっしゃるのかなと思うのですが、そんなときはどんなふうにメンタルを保ったらいいのでしょうか。
大島さん
大島てるのサイトを始めた頃、有名になる前に知ることができる立場にいたにもかかわらず、何の反応も示さない人を見ると、「ちょっと大丈夫かな」と思ってました(笑)。
もちろん、誰も反応してくれないというのであれば、多分自分が悪いんでしょうけど、面白いと言ってくれる人もいるのに、そうでない人もいたので。
株でも、値上がりするって分かったら安いうちに手を出すわけですよね。そういう鼻が利く人と比べると、反応しない人は「センスがない」ということになると思います。
作家の皆さんも、面白いと感じてくださっている方がいるのであれば、そうじゃない方には「センスがないやつだなあ」と思っておくのもいいんじゃないでしょうか。
応募者へのメッセージ――部屋にこもって書き始める前に
――最後に、今回のコンテストに応募しようとしている方へ、メッセージをお願いします。
大島さん
すごく若い人だと、世界が「学校と家族」で完結してしまいがちです。そこでいじめなどに遭うと、逃げ場がないと感じてしまいます。でも本当は、世界はもっと広い。事故物件ひとつ取っても、空想や想像だけでなく、実際に調べたり、体を動かしたりしてみると、思っていた以上にたくさんの人がその場所に関わっていることがわかります。
部屋にこもって、ただいきなり書き始めるのではなく、少し外に出てみるだけでいい。現地まで行かなくても、地図を見たり、ニュースを調べたりするだけでも、見えてくるものは変わります。
題材にしてもストーリーにしても、「ベタな話」だけでなく、ちょっと変わった作品を見てみたい気持ちもありますが、そもそも「事故物件もののありがちなパターン」というのはまだまだ確立されていません。探偵もののようなお決まりの型もありません。だからこそ、自分なりの「事故物件」を書いてもらえれば、私からすればそれだけで十分嬉しいです。ぜひ自由な発想で、物語を紡いでみてください。