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第4回ネット小説大賞 最終選考総評


総評

 2016年、『エリュシオンライトノベルコンテスト』『エリュシオンノベルコンテスト』と、毎年のように名前を変えながらも、『なろうコン』という統一名称で開催してきたこのコンテストですが、第四回を迎える今回より『ネット小説大賞』という統一名称にて開催し、前回を上回る合計7,612作品の作品応募がありました。

 ジャンルも作品数の増加にあわせて多様化し、「小説家になろう」において人気のジャンル以外の作品の受賞も目立つ形になりました。
 応募作品数以上に、年々作品の品質水準も高くなり、また商業的な面を意識した作品が多く、コンテストとしてのレベルが上がっている点もあり、応募作品の選考は例年以上に慎重におこなわせていただきました。


面白さ・基準

 「小説家になろう」における書籍化作品も、当コンテストの受賞作もそうであるように、第一回が開催された4年前とは比較にならないほど多くなりました。
 それは書籍化を目指す作者の方にとってはわかりやすい「目標」である一方で、「対抗しなければならないライバル」でもあると考えています。
 そういった環境で、常に、応募作は受賞に向かっていく中「既存の作品とどう勝負するか」を考えられている著者の方もいらっしゃると思いますし、選定する側も「どういった点が既存作との差別化になるか、読者をより引き付けるか」といった点を、注目することもあります。
 今回金賞を受賞いたしました「かたなかじ」先生作、『再召喚された勇者は一般人として生きていく?』は、ジャンルこそ異世界召喚系であり、王道を感じさせる部分もございますが、強制送還された瞬間や、魔王討伐時の主人公の記憶があやふやになっているという謎があり、かつ再召喚されたのは千年後の世界という、「同じ世界に召喚されなかった理由」「千年間の空白の謎」と言ったものが徐々に明かされていくという、一種のミステリー的な要素を盛り込み、読者を引き込んでいく流れが高く評価されました。

 昨今読者の興味が登場人物を応援する「感情移入」から、登場人物に自己を重ねる「自己投影」にうつっていると言われて久しい部分はございますが、今回ストーリー展開としても、世界を制覇し、例えば神といった、より上位概念に挑戦する作品がある一方で、更に読者にとって身近な場所を深く掘り下げる作品も多くありました。
 今回金賞を受賞された「錬金王」先生作『転生して田舎でスローライフをおくりたい』もそのひとつであり、物語の舞台が固定されており、主人公は強大な敵と闘うわけでも、世界の王を目指すわけでもなく、ゆっくりと生活をしていくストーリーです。一方でそういった話に大きな山が存在しない作品であるからこそ、一話一話の完成度やキャラクター同士の掛け合いなどが重要になってきます。『転生して田舎でスローライフをおくりたい』はキャラクターが乳児から始まる、ゆったりとした展開ですが、乳児ながらに周囲の状況に適切につっこんでいくなど、読者を飽きさせない仕掛けが充実していました。


ジャンル

 いわゆる「異世界転生もの」として括られる傾向のある「小説家になろう」作品ですが、そこまではあくまで書式のようなものであって、その上でアイディアや表現方法を競い合い、鑑賞する側はその中での差異を楽しむことで、結果ジャンルが盛り上がって文化が形成されていったものと理解しています。
 どんな表現ジャンルでもそうですが、ムーブメント初期の「なんでもあり」のタイミングこそが、中にいるのも外から見るのもスリリングなもので、そしてその熱狂はだんだんと成熟へ向かっていくことになります。
 断定することには慎重にならないといけませんが、「異世界転生もの」を中心としてみた場合、ネット小説においても、ある程度突飛なアイディアも出尽くし、次のフェーズに移行しつつある感覚もございました。
 あるジャンル、スタイルのブームがあってそこに乗っかる場合、そこで結果を出すためには誰しもに「その手があったか」と思わせるくらいの発想の新鮮さ、意外性は必須であると考えます。
 今回の大賞においても、お約束を逆手に取ったような設定でメタ視点を持たせつつ、それだけに終わらず読者を飽きさせずにエンターテインさせる才能も、一つや二つに留まらなかったと思います。また、お約束要素は微小にとどめ、じっくりと自身の書きたい物語を煮詰め突き詰めてつくられた、読み応えのある物語にも多く出合うことができました。
 選考のポイントという視点から見ればどれだけ著者が個性とエンタテインメント性を出せるかがポイントになりました。これまでの転生、転移とは違った作品を生み出していきたいという書き手の意欲を感じる作品が多く、特にこれまでは主に勇者、英雄、モンスターといった転生が多かったが、「棚架ユウ」先生作『転生したら剣でした』のように、剣や盾などの無機物への転生も多く見受けられ、書き手の独創的なアイデアへの驚きとともに、それを受け入れる事のできる読者の感性に市場の成熟を感じられました。
 今回金賞を受賞した「ゴブリンの王国」は連載開始は2012年の作品であり、現在の主流と異なる展開を狙った作品ではありませんが、ゴブリンに転生し、魔物を率いて成り上がるという単純なストーリーだけではなく、ゴブリンという魔物の特性や、それを取り巻く世界情勢など、読めば読むほど『戦記』としての魅力が増していき、これまで幾度となく『物語は序盤が大事』といっていた総評など吹き飛ばす勢いを見せてくれ、非常に高い注目を集めました。
 「みのろう」先生作『日本国召喚』に関しても、現代日本の『誰か』といった個人単位ではなく、『日本』そのものが異世界に行ってしまうという形の展開であり、我々が住む世界が異世界に行った際にどういった視点で見られるのか、物語の中で描かれる広大な世界と相まって、大きな可能性を感じさせてくれました。
 向日葵先生作、『異世界でもふもふなでなでするためにがんばってます。』は、過労で疲れて、転生した主人公が与えられた能力が『人間以外の生物に好かれる』という、チートであるかどうかすら疑問な能力でしたが、むしろ毎話もふもふしつつ、動物とたわむれながら異世界ライフをおうかする主人公を見ていると単純に羨ましくなり、理想のチート能力ではないかと考えるほどでした。

 異世界ジャンル以外においても、今回のコンテストでは受賞作が目立ちました。
 「筏田かつら」先生作、『眼鏡とあまのじゃく ~地味なモブの俺が、なぜか派手なギャルの美少女につきまとわれてる件について~ 』は現代恋愛ジャンルであり、小説家になろうでは主流ジャンルというわけではありませんが、思春期独特の登場人物の葛藤、すれちがいといったテーマを、抜群の文章力で見事にまとめており、ダブル受賞となった『静かの海』とあわせて、コンテストの可能性を感じさせてくれました。

 数年あるいは何作か書き続けている作家さんであれば、盛り上がっている作品を見てその理由を探り、自身の作品に採り入れるなどして、試行錯誤の時期から自身のスタイルを掴んでいかれているものと察しますが、発明的な視点からまったく新しいものを生み出すことはまだまだ可能だと考えます。
 また、仮に主流ジャンルから外れていたとしても『自分が好き!』といった気持が前面に感じられ、それを『読者の方に伝える努力をしている』作品は、ジャンルの壁を打ち破れるパワーを保持していると考えます。
 あっと驚かせてくれるような作品がこれからもどんどん現れてくれることを期待いたします。


読者層等

 「小説家になろう」、「ネット小説大賞」、あるいは書店そのものにおいても、日々新しい作品が続々と追加されています。時に揶揄されてしまう小説のタイトルではありますが、多くのヒット作がそうであるように、まず作品タイトルで「わかりやすく」「読者をひきつける」ものは必要になります。
 今回金賞を受賞した「時野洋輔」先生作、「成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです」に関しては、難しい言葉や複雑な設定を使うよりも、分かりやすい言葉や設定で表現してあることが選考で重要視されました。エンターテイメントという本質を突き詰めれば、より多くのユーザーに対して伝わるということは一つの正解であります。
 メディア賞を受賞した「たわわ」先生作『ラスボスの向こう側~最強の裏ボス=邪神に転生したけど、1000年誰も来ないから学園に通うことにした~』も、タイトルで読者をつかみ、主人公が最強の邪神なのに1000年間引きこもっていたせいで女性とまともに話せないといった展開で一気に読者を掴んでくれました。キャラクター個々が立っていたことも、メディア賞に選ばれた理由です。

 一方で、読者層を絞ることで評価される作品もあります。「ポルカ」先生作、「明かせぬ正体 ~乞食に堕とされた最強の糸使い~」はかつて最強だった糸使いの主人公が呪いによって体型と能力を変えられ、能力を取り戻した後に復讐をする展開です。万人受けするわけではありませんが、特定の読者に対してガッチリとつかんだ作品は、第三回のコンテストでもそうでしたが、大きく成長する可能性を持っています。
 また、先ほどジャンルの成熟をお話しした後ではありますが、読者という視点から見れば、新規ユーザーも小説家になろうにおいて増え続ける中、広い意味での読者がそれほどジャンルに対して成熟を感じているかというのは、また違う可能性があるものだと考えております。
 今回グランプリに選ばれた「チキンさん」先生の『回復魔法を得た童貞のチーレム異世界転移記』は『三十代童貞×超チート×ハーレム!』といった『異世界転移もの』の王道をガッツリとおさえ、気軽に読める文章で、とにかく物語が爽快に進んでいきました。主人公の性格も30代童貞という前提がありながら、またはあるからこそ、チートにおごることなく、童貞を時に守り、善人たろうとしており好感が抱けました。


ストーリー・キャラクター

 小説の肝ともいえるストーリー、キャラクター像に関してはより精度の高い、読者が自己投影しやすいものが多く投稿されました。世界・ストーリー・キャラクターに自己投影するためには、リアルを忘れられるほど楽しくなければならないうえで、かつリアルから想像できるような説得力がなければならない一面もあります。
 金賞を受賞した「舞」先生作、『異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう』は、システムエンジニアが異世界に転移する話ではありますが、読者を飽きさせないように異世界に魅力的なキャラクターを配しつつも、異世界の現実的な部分に対してチートというよりは知識を使ってアプローチをかけていく話の展開が、ストーリーに説得力を持たせていました。
 金賞を受賞した『聖者無双 ~サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~』も主題にある通り、主人公であるルシエルは得られた能力を使って異世界で活躍していくのですが、極端なハーレムやチートを目指すわけでもなく、「サラリーマン」が堅実に営業成績を積み重ねていくようで、人々の信頼や功績を勝ち取っていく姿は、素直に共感できるものであり、結果ユーザーに届きやすかった形となりました。
 必ずしも地に足のついたキャラクターがいいわけではありませんが、落ち着きをもった作品が多い中で、等身大の自分が投影できるような主人公が、小説賞上でも、小説家になろうでも高い支持をあつめる傾向はあります。

 また、商業としてみた場合、人気が出た際に続刊が出せるかどうかという点も前回と同じくひとつの基準となりました。文字数制限がないコンテストであるからこそ、「10万文字で一区切り」といった制約はございません。
 小説として、完成度の高さも必要である一方で、可能性を感じられるかどうかといったことも当然ながら重要な選考要素となっております。

最後に

 締めとなりますが、今回受賞した46作品、42名の著者の方、まことにおめでとうございます。受賞作は既に一部で情報がリリースされておりますが、この夏から発売いたします。
 運営チーム一同、当コンテストから出た作品、およびコンテストにエントリーされた方々の作品が、ひとりでも多くの方の目に留まり、その発信する文化に気づいていただけますよう、継続的にご協力させていただきます。

 一次選考~二次選考と選考を重ねるなかで、7,612作品の応募という、国内最大級の文芸賞に恥じない名作ぞろいの作品群がラインナップしたと思います。
 受賞し書籍化が決定した皆様におかれましては、そういった国内最大級の選考で選ばれたことを誇りに思い、新たな作家人生を歩んでください。
 また、今回残念ながら受賞までには至らなかった皆様も、受賞作との差はどれもわずかなものでしたので、諦めず、作品作りにまい進していただければ嬉しく思います。

 「コンテストの最大の価値は何か?」といえば、それは「新しい作品が生み出され、出会える」ことであると考えております。
 今回も応募作の内、約半数はコンテスト開催告知以降に連載が開始されたものであり、当コンテストが皆様の「書くきっかけ」になれていることに、まずはほっと胸をなでおろしております。
 受賞基準といったものは当然ながら時代や選定者によって変わっていくものですが、コンテストといたしましては今後とも素晴らしい作品に出会えることを願ってやみません。

 皆様、これからも何卒よろしくお願いいたします。



ネット小説大賞運営スタッフより

 皆様お世話になっております。ネット小説大賞運営チームです。
 2015年10月から開催しておりましたコンテストにご参加いただきまして、ありがとうございました。
 今回は7,612作品と、前回を上回る作品に応募いただき、皆様からのご期待を強く感じることができました。歴代の受賞作の頑張りもあり、第四回ネット小説大賞から書籍化確定作は『46作品』になりました。
 皆様の応援によって、「国内最大のコンテスト」であり続けることができております。たくさんのご参加、応援、まことにありがとうございます。

 当コンテストは、受賞が前提のコンテストであるからこそ「受賞だけがコンテストじゃない」をキャッチコピーに運用してまいりました。
 『46作品受賞』は途方もない数に見えるかもしれませんが、実に『99.4%』の方は(拾い上げの可能性があるとはいえ)落選された形になります。まだまだ十分ではありませんでしたが約1000作品に感想をつけていったり、イラストプレゼントを実施したりいたしました。(イラストは現在制作中のものがございますのでこちらの最終発表はもう少々お待ちください)

 コンテストに応募することはエネルギーがいることであり、コンテストに当選した後改稿することもエネルギーのいることではありますが、書き続けることはそれ以上に難しいことです。
 コンテストをきかっけに書き始める方がいる一方、コンテスト落選をもって書くのを諦めてしまう方がいらっしゃることも理解しておりますが、当コンテストの審査は一面的なものであり、作品の価値や、まして著者の才能そのものを否定するものではありません。
 無責任な記述になってしまうかもしれませんが、書き続けることでチャンスは続いていくものです。

 選考に話を移します。
 今回の選考は、コンテスト名そのものが変わったことがあり、7,612作品はすべて新規にキーワード設定していただいた作品となりました。そういった意味では繰り越しをした前回よりも3,000作品程増加した形となり、受賞作の数が物語る通り、非常にハイレベルな選考になりました。一次選考前の予備選考の段階で既に平素の基準では削りきれず、都合二度、予備選考をする形になりました。
 また一次選考・二次選考においてもその傾向は顕著であり、出版社ごとに選定基準が異なったこともあり、通過作品が非常に多くなりました。これもひとえに、魅力的な作品が多すぎて絞りきれないといった状態であったと考えています。
 そんな中合否を分けたのは何だったのか。
 あくまで運営から見た、出版社とは無関係の主観であるという前提で、今回も皆様にお伝えできればと考えています。



ジャンルに関して

 『異世界・転生・ハーレム・チート』
 という単語を見て『ムッ』としたあなた。
 その『ムッ』がどこから来ているのかはわかりませんが、本当にそのジャンルを知っていますか?
 「知っている」というのは、どんな人が、どんな気持ちで、どういったものを求めて、読んでいるのかということです。『ムッ』とするのはそのあとにしましょう。
 異世界ジャンルに限った話ではなく、あらゆるジャンルにおいて執筆する際には、まず読んでいる読者に敬意を払いましょう。商業のラインに乗るためには読者なくては始まりません。
 作品の中だけでつかわれている造語を序盤から並べても理解することは困難ですし、面白くなるまでに10話もかかっているようですと、多くの読者はそこまで辿りつかないでしょう。それはひとつのプロット論でもありますし、ジャンルを選んだ段階で、読者が何を求めているのかといったことも違ってくるといったことを考えてください。

 一方で、「作者自身も読者の一人である」ことも忘れてはならない事実です。『現在の流行ジャンルから、ヒットしそうなものを選定する』ことも大切なことですが、それ以上に、小説を書くというものは、作者にとって楽しいものでなくてはなりません。
 店舗を開店するときがそうであるように、「ユーザーの多い場所を選ぶ」ことは大切なことですが、そのユーザーをしっかりとつなぎとめるだけの品質・モチベーションを維持することができなければ、書籍化はのぞめないでしょう。



可能性に関して

 上記と適合する部分でもありますが、『ジャンルの壁を打ち破る』ことは、私見ではありますが『作者の猛烈なやる気』があって初めて成立するものであると思います。受賞作のひとつ、ゴブリンの王国などはまさに象徴的な作品であると思うのですが、異世界転生系という大枠の中のひとつではあるものの、一介のゴブリンから王になり、王になった後も上へと進み続ける姿は、流行であるとか、序盤の展開であるとか、技術論を超越したところを、作者様の強烈な個性でつくりあげた作品でした。

 「自分が書きたいものはあるのか?」と聞かれて即答できるような方は、あるいはそれを入口を広げつつ執筆すれば、受賞は目の前なのかもしれません。




最後に

 7,612作品を応募していただいた皆様、並びに読者の皆様、当コンテストに最後までおつきあいいただき、まことにありがとうございました。
 第四回コンテストはこれにて終了となりますが、第二回から第四回の歴代受賞作品を含めまして、受賞作の最新情報、及びコンテストの今後の情報は当サイトでも継続的に告知してまいります。ぜひ引き続きご応援、よろしくお願いいたします。
 また、当コンテストではお約束はできないものの、ひとつでも多くの作品が世の中におくりだせるよう、今回も努力させていただきます。
 
 小説というものはエンターテイメントです。エンタメである以上、本来読むことも書くことも楽しいものです。
 我々としては、コンテストを通してこの小説という文化がより広がっていくことを願ってやみません。

 今回は、ご参加まことにありがとうございました。引き続き何卒よろしくお願いいたします。


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